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最高裁判所第二小法廷 昭和50年(行ツ)108号 判決

東京都港区港南五丁目三番二三号

上告人

松岡冷蔵株式会社

右代表者代表取締役

松岡清次郎

東京都港区芝五丁目八番一号

被上告人

芝税務署長

和気徹

右指定代理人

五十嵐徹

右当事者間の東京高等裁判所昭和四九年(行コ)第五号、同第九号青色申告書提出承認取消処分等取消請求事件について、同裁判所が昭和五〇年九月一〇日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

被上告人のした上告会社の係争年度にかかる法人税の青色申告書提出承認取消処分が取り消されたことにより上告会社が正当な帳簿記載を無視して課税されることのない保障を受けるのは、上告会社が青色申告書を提出した事業年度の法人税の更正についてであり(旧法人税法(昭和二二年法律第二八号)三一条、三二条)、上告会社が所得税法に基づき源泉徴収すべき所得税についてまでその保障が及ぶものではない(当裁判所昭和五一年(行ツ)第五八号同年一〇月一日第二小法廷判決参照)。

論旨は、右所得税についても右の保障が及ぶことを前提とするものであつて、採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡原昌男 裁判官 大塚喜一郎 裁判官 吉田豊 裁判官 本林譲 裁判官 栗本一夫)

(昭和五〇年(行ツ)第一〇八号 上告人 松岡冷蔵株式会社)

上告人の上告理由

一、第一審判決は上告人(第一審原告)の請求の趣旨第一乃至四項を容認し、第五項の一部についてのみ上告人敗訴の判決をなし、これに対し上告人は、右敗訴部分につき、被上告人(第一審被告)は、被上告人勝訴部分を除く全部に対し、控訴をなしたが、原審において被上告人は右第一乃至四項に対する控訴を取下げたるため、上告人の勝訴部分である右第一乃至四項についての第一審判決は確定した。

そして原審は上告人の残る請求の趣旨第五項につき、第一審判決を取消して、上告人の全部敗訴の判決をなした。

二、そもそも本件においては、上告人の請求の趣旨第一項、青色申告書提出承認の取消処分の取消を求める訴、同第二乃至四項、当該各事業年度の更正処分の取消を求める訴、同第五項、源泉徴収賦課決定処分の取消を求める訴、いづれもその請求の基礎を同じくするものである。

三、してみれば、第一審判決が、上告人の第一乃至四の訴について、いづれも「理由附記」に違法があつたとして上告人の請求を容認するに止まらず、第五の訴について請求の基礎事実の実体審理をなし、上告人に対し敗訴の判決をなしたることは、一事不再理の原則に反するといわなければならない。

四、即ち第一審判決が上告人の第一乃至四の訴につき、被上告人の処分を違法として当該処分を取消したることは、結果的には上告人が被上告人に対してなした当該事業年度の法人税確定申告に包含された事実が是認されたことに外ならない。

五、しかるに第一審判決並びに原判決は、上告人の第五の訴を判断するに当つて、自ら容認し、また原審において被上告人の控訴取下によつて確定した第一乃至四の訴の請求の基礎を堀り起すが如く実体審理に立入ることは、一事不再理の原則に反するといわなければならない。

故に第一審並びに原判決の上告人敗訴部分については、正に判決に影響を及ぼすこと明らかな法令の違背があるので破毀されるべく上告する次第である。

以上

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